中島が1988年より2001年まで在籍した研究室では, もともと,機械におけるダイナミクスの中心的課題である 「機械の振動をいかに抑えるか」 についての研究をずっと行なってきました. しかし全く逆の立場の, 「振動をわざと発生させてそれを積極的に利用できないか」 という発想から, さまざまな機構に自励振動を発生させ, それによって推進などの仕事を行なうことを小野京右教授が考えました. 「自励振動」というのは,例えば, 窓のブラインドが風でバタバタバタと振動している状態です. このとき風の強さは一定でも,持続的に振動が継続します. つまり振動的でない一定入力によって振動が発生しているわけです. このような自励振動は,外界をも含んだ系自体の固有振動として発生するので, エネルギー的にも無駄が無く,また外界が変化しても, 運動がその変化した外界を含む系の固有振動になるだけなので, パラメータ変動に強い(ロバスト性が高い)運動・機構が期待できます.
以上のような立場から, 中島が在籍した研究室では, これまでトンボのはねの形の機構や歩行機構などにこの自励駆動法を適用してきました. ここではそれらの研究のうち,中島が担当した部分についてご紹介したいと思います.